舞台美術家・松下朗さんと西城秀樹さんとシミズオクトの素敵な関係とは? ラジオ『清水佳代子の裏方ひとすじ』より
|イベントマガジンBANZAI発行人の清水佳代子(株式会社シミズオクト取締役副社長)が、毎回ゲストをお招きし、昭和から令和までのスポーツやエンターテインメントのイベントのエピソードあれこれを裏方目線で語り尽くすラジオ番組『清水佳代子の裏方ひとすじ』。
今回は日本のコンサート美術史をまとめた書籍『ハロー! バックステージ』を紐解きながら、舞台美術家・松下朗さんについて、北野岳さんとお話ししました。
日本のコンサート美術史をまとめた書籍『ハロー! バックステージ』とは?
清水佳代子(以下、清水):今回はこの番組の主宰者とも言える株式会社レプリネット・カンボジアの北野岳代表をゲストに、私の所属している株式会社シミズオクトが約20年前に出版した日本のコンサート美術史『ハロー! バックステージ』という書籍の中から、舞台美術家についてお話ししたいと思います。
北野岳(以下、北野):はい。スタジオでご一緒に話すのは結構久しぶりなんですよね。
清水:たまにはやってみたいなと思いまして。
北野:ありがとうございます。今回はまさにこのラジオ番組をやっていただく、ある意味きっかけにもなっている内容ですよね。
清水:はい、そうなんです。全てのイベントやコンサートには創意工夫や努力とか、そういうものが裏方も表方もあると思うんですけれども、その裏方のほうを私が伝えていきたいなと思っていまして。
それで20年前に『ハロー! バックステージ』を、10年前に『ハロー! バックステージ2』を出版しまして。
北野:そうですね。『ハロー! バックステージ2』も出ているんですよね。
清水:はい。その本の中から今日はちょっと“デザイナー”という仕事に焦点を当ててお話ししたいと思います。
北野:はい。お願いします。
清水:はい。先ほども言いましたけども、アーティスト等の活動自体を紹介した雑誌ってたくさんあると思うんですが。
私も音楽出版社に勤めていたことがありましてよく知っているんですけれども、雑誌はレコード会社のCDなどの音源リリースとそのプロモーションと連動してまして、なので、レコーディングレポートとかその新作についての気持ちなどを聞くようなインタビューするような雑誌っていうのはよくあります。
ただ、その後のライブについての模様はその雑誌で掲載されることは極端に少なく、さらにライブっていうのは公演が終了すると告知も終わりでして。
チケットが売れる前まではいろいろ告知をしたりとかしますけれども、その終わった後にそのライブがどうだったかっていうレポートっていうのはあまりされなかったり、またはそのエピソードなどが語られるということは殆どなかったので、そういうことを伝えたいと思いました。
今ではちょっと時代が変わりまして、ライブを収録したDVDとか有料の放送や配信などで、ちょっとバックステージとかこぼれ話みたいなものが付録で付いていたり、そういうのはよくありますけれども。
そんなふうにいろいろな観る方法があると、ライブに行けなかった人も含めてさまざまな楽しみ方ができるようになって、それはすごく良いことだと思います。
北野:そうですね。はい。本当に動画の時代になってきたのは比較的最近ですもんね。
清水:はいそうですね。はい。
北野:今では本当に、今仰ったようにDVDだったりとかで後からライブ映像を楽しめる人が、昔に比べたらめちゃめちゃ増えているし、保存も今に至るまでされているということですもんね。
清水:そうですね、はい。私達は舞台美術を作った後にプロのカメラマンを入れて、アーティストが入っていない舞台の写真を撮るという事を滅多にしてきてなくて。
営業さんやそこに参加したスタッフが個人的に……そんなに良いカメラじゃないと思います……そうですね、レンズ付きフィルムやインスタントカメラみたいなもので、今で言うと携帯電話などで自分の思い出として撮るということなどはよくあったんですけれども。
そういう写真を皆さんに提出しなさいと頼んだので、最初に出した『ハロー! バックステージ』は、印刷に耐えられないような写真もあったんですけれども、あえて採用したりもしています。
北野:特に『ハロー! バックステージ』の方には、そういう初期の写真も結構入っているということですね。
清水:はい。
北野:なるほど。結構やっぱり貴重ですね。
清水:はい、そうなんですよね。
舞台美術のデザインは誰のもの?
清水:それで舞台美術家って言うと、何かすごくアカデミックな感じや、国立劇場みたいなものとかそういうイメージを持ちますけども、コンサートのセットデザイナーと言うと急にカジュアルになるような感じがありますよね。
スタッフは名前をクレジットされることも多くて、パンフレットにもデザイナーは上の方に載せてくださることが大抵多いんですけれども。
ちょっと曖昧なところが、セットのデザイナーっていうのは、アーティストやプロデューサーが頼んだことを図面にしているだけであって、そのデザイナーの創作ではないという意見も根強くありまして。
その権利っていうのはそのデザイナーのものなのか、それともアーティストの持ち物なのかということは、たまに議論になるんですけれども、そんなふうにちょっと明確化はされていない、ということがあります。
特にうちの会社は、社員のデザイナーなどは、私達が予算をもらって舞台を作る中でその図面を引きますので、それがデザイナー自身の芸術なのかということは、なかなか曖昧ということはあるんですけど。
舞台美術家・松下朗さんとの出会いとシミズ舞台工芸の発足
清水:でもそんな中で、50年ぐらい前からテレビ美術・舞台美術・コンサート美術のデザイナーの地位向上を目指して声を上げてる方がいらっしゃったんですね。
それは1970年代ぐらいから最近までご活躍されていた松下朗さんという方なんです。シミズオクトはその頃、シミズ舞台工芸という名前だったんですけれども、まだ舞台美術会社とは名乗っていない時代ですね。
その頃、シミズスポーツ装飾センターというのがあったんですけども、現会長の清水卓治が舞台装置の専門家にいろいろアドバイスをいただいて、きちんと舞台美術をやっていっていきたいということで、誰がその先生として相応しいだろうかと探していたところ、フジテレビの花形デザイナーだった朗さんと出会いました。
朗さんに教えを請い、現場のニーズに合わせて道具や社員教育をお願いし、晴れて“舞台”という名をつけたシミズ舞台工芸が発足しました。なので本当に朗さんのおかげと言っても過言ではないんですね。
舞台美術家・松下朗さんとシミズ舞台工芸と西城秀樹さんとの関わり
清水:そのシミズオクトの前身であるシミズ舞台工芸と松下朗さんの夏の定番といえば、西城秀樹さんです。
北野:なるほど!
清水:はい。天高く宙を舞うゴンドラや天馬に乗った若かりし西城秀樹さん。若い女の子たちに埋め尽くされた後楽園スタンドの熱狂風景は、それ以後の後楽園スタジアム、つまり東京ドームの歩みをガラッと変えてしまいました。
コンサートの革命とも言えるんですよね。後楽園スタジアム、松下朗さん、それと西城秀樹さんと私達、その輪の中に私達が入れたというのはとても名誉なことだと思っております。
北野:それほどやっぱり結構、斬新なことだったんですね。
清水:そうですよね、はい。私の私見なんですけど、舞台美術家として業界では知らぬ者はいない松下朗さんだったんですけれども、知名度が当時抜群にあった西城秀樹さんの仕事をすることで、松下朗さんの知名度が一般大衆にまで広がりました。
そして西城秀樹さんは不動の人気歌手でありましたが、舞台美術家で古典舞台や現代舞台もやっている有名な舞台美術家であった松下朗さんが西城さんのスタジアムライブを手がけたことで、西城さんは芸術家でもある真のエンターテイナーとして認められました。
そしてシミズオクトはお二人からの難度の高いリクエストにお応えしようと努力することで技術力がアップして、本当にみんなが得をしたトリプルウィンのプロジェクトでありました。
舞台美術家・松下朗さんへ西城秀樹さんが寄せた言葉
清水:という感じでとても影響を与えていました。それで朗さんはですね、ご自分の作品をきちんとまとめて本にしていました。舞台美術はテレビであっても演劇であってもコンサートであっても自分の作品だということを一般に伝えようとしていました。
北野:秀樹さんが朗さんにコメントを寄せたことがあるとか?
清水:そうなんですよね。それが古い資料でありまして。読ませていただいてもよろしいでしょうか。
北野:はい。お願いします。
清水:わかりました。西城秀樹さんのコメントです。
「先生なのに親しみを込めて『朗さん』とお呼びしています。その方が似合うから。
この世界に入って私は朗さんから随分沢山の事を学びました。デビューしてから10年、1人の美術家に守られて育ちました。
ステージでも球場イベントでも、親父のような朗さんの仕事がなぜ若者にフィットするのか不思議です。
いつも若々しく新鮮なそしてダイナミックなお仕事に乾杯! 感謝しています」
僭越ながら私が読まさせていただきました。
北野:ありがとうございます。では曲を1曲聴きましょう。
清水:はい、まさにその西城秀樹さんの『情熱の嵐』!
※2021年10月14日にラジオ放送された内容を再録しました。ラジオでは西城秀樹さんが歌った曲を放送しましたが、権利の関係で本サイトには掲載いたしません。
もしよろしければ ネオ昭和歌謡ユニット 小惑星によるカバーをご覧ください。
(後編は近日公開)
関連書籍
ラジオ番組『清水佳代子の裏方ひとすじ』
放送日時:レインボータウンFM(88.5MHz)で毎月第2木曜22:30~23:00放送。https://885fm.jp
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PROFILE
北野 岳(きたの がく) | 株式会社レプリネット・カンボジア 代表取締役。一般社団法人日本アジアビジネス協会 理事。レインボータウンFM パーソナリティ。
清水 佳代子(しみず かよこ) | 株式会社シミズオクト 取締役副社長。さまざまなイベントやアーティストなどのプロデュースを手がける。イベントマガジンBANZAI発行人。慶應義塾大学大学院修了。iU(情報経営イノベーション専門職大学)超教授。