『氣志團万博2017」氣志團20年のキャリアが誇る、音楽の“おもてなし”
|
Special Interview 氣志團 綾小路 翔が「氣志團万博2017」を振り返る
今年で結成20周年を迎える氣志團が主催する音楽イベント「氣志團万博2017」。
台風接近にともないあわや開催中止か? とも心配されているなかで、氣志團のフロントマン綾小路 翔はどんなことを考えていたのか。團長に今年の氣志團万博を振り返ってもらった。
撮影:青木カズロー、菊地英二、上山陽介、釘野孝宏、BANZAI編集部
シミズオクト Presents 氣志團万博2017
~房総与太郎爆音マシマシ、ロックンロールチョモランマ~
Supported by イオン銀行
開催日: 2017年9月16日(土)、17日(日)
会場:千葉県・袖ケ浦海浜公園
出演者: 氣志團 他 アーティスト総勢33組出演
主催: ニッポン放送 / シミズオクト /
オフィス男闘呼塾エンターテインメント
企画: オフィス男闘呼塾エンターテインメント
制作: 氣志團万博2017実行委員会/ THE FOREST
特別協賛:イオン銀行
後援:千葉県 / 袖ケ浦市 / 木更津市
──台風が差し迫っている中での氣志團万博でしたが、無事に完走することができました。
とにもかくにも奇跡を常に起こし続けるのが氣志團万博だと思っています。今回は布袋寅泰さん、山下達郎さん、米米CLUBなどレジェンド中のレジェンドや、WANIMA、マキシマム ザ ホルモンなどの若者のカリスマ、さらには同期のスーパースター・Dragon Ashが来てくれたりと、すでに奇跡が起きた状態でスタートできました。ですが今年最大の奇跡は、あれだけ台風が直撃すると言われながらも、台風が一度後退したあとに、角度が変わったこと。たくさんのイベントが中止になるなか、万博だけが2日間開催できたのが、それが何より最大の奇跡だったなと感謝していますね。
──台風接近にともない、途中で中断を考えたりましたか?
正直、全然思わなかったんです。というのも、房総は自分の故郷ゆえに気候をよく知ってまして。ここ、滅多に台風直撃しないんですよ。今回も20数年ぶりに直撃すると言われていましたが、20数年前に遡ると、その頃我々は地元に居たのですが、台風が直撃した記憶がないんですよね。こう見えて我々、過去十数年のデータを調べたなかであの時期を狙っているので、一応一番確率の低いところではあるんですよね。それでもやっぱり絶対というのはないですからね。みんなが心配した瞬間もありましたけど、僕はおそらく中止にするようなことにはならないとは踏んでいました。ただ、単純に体温やテンションはどうしても下がってしまうわけで、この環境をみんなが楽しめるのかなという不安はありました。でもね、この出演者の顔ぶれですよ。何せ最強無敵の艦隊と化していましたから、氣志團万博2017。降りしきる雨すらも、クラウド達を熱狂の渦に巻き込むための、ある種特効のひとつに変えてしまった程の演出の数々に感服しっ放しでした。むしろそれが呼び水のようになり、オーディエンスの皆さんが喜んでくれたので嬉しかったです。ただ、物販や飲食は心配でしたね。ビールやかき氷は出ないんだろうなぁ…と(笑)。
台風接近間近に大トリを務めた米米CLUB
YASSAIステージ、2日間の大トリとして満を持して登場したのが米米CLUB。降りしきる雨などお構いなしにステージを赤く染め上げ「FUNK FUJIYAMA」「浪漫飛行’07」などのヒットナンバーを披露。華々しく氣志團万博を締めくくった。
布袋寅泰×綾小路 翔 BOØWYの「Dreamin’」で競演を果たす!
初日のトリを務めたのが、世界的ギタリストとしても定評のある布袋寅泰。袖ケ浦の空気を一変させる程の存在感で「スリル」「POISON」「バンビーナ」などのヒットナンバーを披露。そして綾小路 翔自身が大きな影響を受けたというBOØWYの名曲「Dreamin’」でセッションを披露。ひとつのマイクで互いにシャウトするその様子に、会場のボルテージも最高潮となった。
ポップス界の重鎮 山下達郎が袖ヶ浦に!
今年氣志團万博に初登場として話題を呼んだ山下達郎は、日の暮れ始めた夕方の時間帯に登場。コーラスには、自身の妻である竹内まりやも加わり、往年のヒットナンバーである「ハイティーン・ブギ」や「硝子の少年」をセルフカバー。さらに袖ケ浦の海沿いには、未来への躍動を感じさせる「アトムの子」が鳴り響く。ステージの高い位置へと上り、会場を見渡す彼の姿が印象的だった。
音楽シーンを賑わす33組のアーティストが出演!
日本のロックシーンを牽引し続けるユニコーン、東京スカパラダイスオーケストラ、Dragon Ash、もはや氣志團万博ではレギュラー的存在とも呼べるももいろクローバーZ、次世代アーティストとして音楽ファンから絶大な支持を得ているWANIMAや水曜日のカンパネラなど、ジャンルを超えて総勢33組のアーティストが袖ケ浦に集結。これぞ氣志團万博の醍醐味である。
多くのアーティストが氣志團万博に出演したい理由
──来場者が何時間も雨に打たれてても、フェスを楽しんでいる様子にタフさを感じて、それは各アーティストのライヴパフォーマンスを目の当たりにしているからなのかなと思いました。
僕らの感覚的には時々一緒にイベントに出たり、普段どこかで会えば言葉を交わすミュージシャン仲間たちでもあるけれど、冷静に考えたらとてつもないスターたちですから。そんな方々がこんな我々の地元に来てくれて、その上あんなに氣志團だの木更津だの袖ケ浦だの連呼してくれて…嬉しいですよね。ありえないことだと思うし。俺たちがやる前はうちの地元にそんな機会はなかったので、もしかしたら少しくらい地域貢献のお役に立てているのかなと。
──出演アーティストにはどのようにオファーをかけるんですか?
良く聞かれるのですが、基本的には極めて全うに行くところからスタートしていると思いますね。テクニックのようなものは基本的にないですし、なんの後ろ盾もないです。僕は先方に「断りづらい」と思われるのが、一番嫌でして。我々は最高の場所を用意してお待ちしているので、「どうかお越し頂けませんか?」とストレートにオファーしています。今回無理だと言われたら、それはそれ。だだ諦めないんですね、馬鹿だから(笑)。例え無理でも何度でもアタックしようと思っています。自分たちのやっていることには自信を持っていますし、絶対に失礼に当たることはやらない。二度と来たくないと思われるイベントには絶対にしない。また来たいと思ってもらえるようなイベントにすることに命をかけています。ありがたいことに何年か続けていくことによって、出演者の方々や関係者の口コミで、今までだったら絶対不可能だと思っていた方々までもご出演くださるという現象が起きており、心から感謝しています。
──氣志團万博は、毎年出演アーティストのジャンルが多彩ですよね。
自分は情報があまりに不足している時代にあの街に生まれました。それでも知りたいことがあって、欲しいものがあって、体験したいことがあって必死で駆けずり回った経験が今の自分を形成していると思っているんですよね。それもあってジャンルとか、そういうのにとらわれないで生きてくることができたんだと思うんです。もちろん特に好きなものもあれば、興味の薄いものもありますけど、見方を変えたら逆におもしろいものに変化するものが多いことも知っています。僕は本当に雑食で、何かは何かの上だとか、何かは何かの下だとか、テレビに出てるからどうとか出てないからどうとか、あんまりそこにはとらわれていなくて。すごい音楽、すごいステージ、すごい人間力、それだけがすべてっていうところで生きてきたので。
──それがアーティストのブッキングにも大きく反映されている。
おせっかいイベントなんですよね(笑)、曲がりなりにも音楽に携わるものとしては、みんなの食わず嫌い、聴かず嫌い、観ず嫌い、行かず嫌い ……そういうものを少しでもなくしてあげられたらなと思っています。僕自身そこが得意だと思っていて、食事に行くときも好き嫌いはないので基本何でも食べるし、食べられないものはないんです。さらに今まで食べていても何とも思わなかったものでも、そこにストーリーテラーが現れることによって印象が変わることがある。“この食材の成り立ち” “これに対して合うお酒は?” “実はこの食べ物には…”って教えてくれる人たちがいることで、今までそこまで興味のなかったものがとてもおいしく感じられるようになったり、好まなかったものを食べるようになったり。逆に教えてくれる人がヘタだと、嫌いになることもあると思うけど(笑)。自分はそういうことが大好きで、例えば旅も好きだし、食べることも好きだし、お酒も好きですし何より人と出逢うことが好き。その中で自分が一番できることって何だろうと考えたときに、エンターテイメントのキュレーションだと気づいて。出るところは出るけど、これ以上出ちゃいけないところは一切出ちゃいけないというバランスを考慮しながら、来場者や出演者の皆様が楽しめる環境を常に…いや、時々かな? 精一杯考えています(笑)。
氣志團万博を通じて、よりたくさんのアーティストを体感してほしい
──Dragon AshのKJさんがライヴ中に言った「俺たちに感謝はいらない。ただいろんなアーティストを知るきっかけをくれた氣志團にリスペクトを」という内容のMCが印象的でした。
もちろん僕も観てました。建志はおべんちゃらを使う人ではないから、感動して泣きそうになりました。すごく心に響いて。そういう風に思って出てくれているんだなと感謝ですね。そのあとDragon Ashのドラムのサクちゃんも「僕は毎年出たい」と、連絡をくれて。あれだけ国内外のフェスに引っ張りだこの彼らにそう言ってもらえたことが嬉しくて嬉しくて。シミズオクトTVの企画で頂いた、現地に来てくれた方の声とかも、すべてが原動力になりますよね。氣志團のファンであろうとなかろうと、そんなことはどっちでもよくて、みんな音楽が好きで、お互い知らないアーティストのファンであったり、知らなかったアーティストに出会ったり、そこで観たものに感銘を受けて、翌日からちょっと違う自分の人生がスタートする。そんな大きな変化じゃなくても、自分の人生の角度が1度や2度変わってくれたら…それに勝るものはないなと思っています。
氣志團番万博を盛り上げる会場内のアトラクション
今や会場内ではおなじみの、シミズオクトが製作している観覧車とリーゼントリフターは今年も健在。さらに今年はメリーゴーランド風に床が回転するバーも登場。悪天候が続いた2日めは、雨宿りスポットとして多くの人が訪れた。
オクトガーデンの守り神綾小路ガルコ
こちらも万博ではおなじみ、オクトガーデン内の守り神的存在であるマスコットキャラ、綾小路ガルコ。ガルコと並んで写真を撮影する人も多い。
お祭り感を倍増させる房総族による“ぼんぼり”
氣志團万博を支援する団体として今年から新たに設立された“房総族”。賛同者は金額によって、特別観覧エリアでのライヴ鑑賞、会場内のぼんぼりに名前を掲載、さらには氣志團との打ち上げに参加できるなどの特典がつく。
雨天の環境を楽しむ来場者
初日の午後からパラパラと振り始めた雨は2日めには強さを増していく。そんな中でもライヴや食事を満喫している来場者たち。雨対策もしっかりとこなす。
氣志團万博における自身のバンド・氣志團の在り方
──氣志團万博では氣志團のライヴパフォーマンスも期待値が高いですが、演出や仕掛けは長い期間をかけて考えられているんですか?
いや、まったくです。今回も8月の終わりくらいかな? 超ギリギリでようやくセットリストが決まりまして。今年は(氣志團結成)20周年なので、当初は大きな仕掛けも考えたりもしましたが、むしろ節目だからこそ我々のステージはすべてを削ぎ落とし、ひたすらシンプルにやってみようということになりました。初日はトップバッターだったので、どんな1日になるかまだ不安な思いでいるであろうオーディエンスのみんなが、少しでも気持ちが高揚するようなものにしよう、とか、2日目はお昼と夕暮れを結ぶ時間帯だったので、終盤戦に向けて良いバトンを渡せるようにしよう、とか、そんなことを考えていましたね。今回は我々のやるべきことが、明確に見えていたと思います。いつも氣志團万博という看板を背負い過ぎていました。気負いというかね。それよりも、この33組のスペシャル過ぎるアーティストの皆様のステージをより楽しんでもらうためのこと。それが重要なんですよね。例えば氣志團万博をフルコースで考えたときに、僕らはちょっとアッパー系のアペタイザーみたいな感じかな。いや、前菜までいっていないかもしれない、食前酒あたりかもしれない。僕はそれが氣志團万博における氣志團のベストな立ち位置なんじゃないかなと思っています。何せ、すべてがメインディッシュですからね。氣志團はそのつなぎができたらいいなと思っていますね。ソルベ…いや、珍味かな。
──氣志團万博のなかで、バンドとしての役割が見えてきたというところですかね。
我々はそっちの方が伝えられることがあるなと。そもそも氣志團は20〜30分では全てを見せることができない系ロックバンドなんですよね。本来は限られた時間で何を見せるかがすべてだと思うんです。ただ、僕らは情報量だけは無尽蔵なバンドなのでね(笑)。そこにこだわるよりも、自分たちがこのポジションでできるベストを尽くそうという想いでやりきりました。結果、今回のステージは過去最高に良かったと思います。
──翔さんご自身が氣志團万博を楽んでいるのも伝わってきます。
最初の頃はひたすら駆けずり回るだけで終わっていましたが、やはり6年の経験のおかげでようやく全体を楽しめる様になって来て、今回自分は33組のライヴをすべて観ることができました。袖で観たり客席で観たり、それと年々裏のモニターも音を良くしてもらっているので、外に行けない時はそこで観たり。いろんな形で網羅できるってのが嬉しくて、もう誰よりも楽しみましたね。1アーティストのライブ中にビール2杯は呑んでいましたから、少なくとも2日間で70杯以上は呑んだんじゃないかと(笑)。
地域と一体になったイベントを目指して
──年に1度、袖ケ浦の街全体が盛り上がる様子を客観的に見てみてどうですか?
袖ケ浦に限らず、房総全体が盛り上がってくれたら嬉しいですね。少しずつだけど市民権も得て来てるような手応えもありますし、メディアの方々にも着目して頂けてますし、世間的にも徐々にご興味を持って頂けていることを実感しています。自分はもっとこの氣志團万博がポピュラリティのあるイベントにしたい。自分の出身だからわかるけれど、うちの地元は良くも悪くも閉鎖的な部分があるんですよ。だけどその壁を超えて、地域の皆さんに誇りだと思ってもらえるようなイベントにしたいし、そのぐらいの自負もあります。地元の方々にさらなるご協力をいただけると、遠方の方々も来やすくなると思いますし、それが地域活性化にも繋がると信じています。お互いが歩み寄って良い関係を築き上げ、他県から来ていただいている方々にも、より良い環境を作れたらと思います。
──今回やってみて、来年の課題も見えてきたということで。
はい! あとはシミズオクトさん次第ですね(笑)!シミズオクトさんにGOと言っていただけたら、我々はもう死にものぐるいでやるだけです(笑)。ご来場者の方々へは、ぜひ今のうちから来年9月のスケジュールをなんとなく押さえて頂けると、これ幸いと。そして、今回お越しになれなかった皆様や、まだこのイベントをご存じでない方には、熱くラブコールしたいですね。「悪いこたぁ言わない、絶対に後悔させない、とにかく幸せにしかしねーから !」と。ぜひともみなさん、俺の街に遊びにきてください !