八方不美人インタビュー〜Vol.2〜
|八方不美人として精力的に活動している彼(女)ら。その歌唱力はもちろんのこと、メイクや華麗な衣装も表現の1つとして目を引く。そのこだわりと、今後の活動について聞いた。
衣装についてお伺いします。いずれも、派手で個性的でありながら、可愛らしさも感じられる衣装ですが、こだわりなどはありますか?
ドリアン:ソロも含めてってなると難しいですね。ソロの衣装の方が思い入れがあるんです。なぜかというと、私たち我が強いので3人で歌う曲よりもソロ曲の方が力が入っている。露骨なんですよ(笑)。
一同 :確かに。それはあるかも。
ドリアン:自分の好きな衣装、その曲の世界観を自由に表現できるので、PVに関してもソロの方が確実に力が入っているのが如実にわかるんですよね。
エスム :個人の衣装はそれそれぞれの裁量で作っているけど、グループとして作る場合、統一感を持たせつつ微妙に違いを出すという作り方になるから、とんがったものになりにくいよね。ただ、リアルクローズに寄せるのではなく、「ドラァグクイーンらしさ」は常に大事にしたいという意識はあります。あと、3人の衣装に関しては、ドリアンの人脈でお願いすることが多いですね。
ドリアン:それこそ今までの私たちの培ってきた縁や関係性の中で八方不美人は成り立っていることが多いですね。
エスム :ドリアンは、衣装に対するこだわりも強いよね。
ドリアン:違う!違う!!私のこだわりが強いんじゃなくて、他のお二人がこだわりがなさすぎるのよ!!無頓着(笑)。
ホイみ :私も次ソロ曲いただけることがあったら頼んでみようかな?通販ばっかりだし。
ドリアン:吊るし物が多いものね。本人は気に入っているみたいだからいいんですけど。
ホイみ :その金額払うなら、オーダーできるじゃない!って言われます。
履くものも衣装に合わせているんですね?
エスム :ブーツにするかハイヒールにするかとか、色とかは、衣装に合わせて変えてるよね。最近はネットのおかげで、大きいサイズのものやヒールの高いものも簡単に買えるようになって、ほんと助かる。昔は手に入れるのが大変でした。取り扱っている店もなかったし。
ドリアン:女装やサイズの大きい方御用達のアメリカのブランドなんですけど、17センチ以上のヒールも種類も結構あって、サイズも28cmとかくらいまであるんです。私はずっと17cmのヒールを履いているんです。背の大きさが売りだとも思っているので。でも十数年間この身長(180cm)でヒール履いて踊っていたら、椎間板ヘルニアになってしまって・・・。
本当に体張ってやってるんですね?
ドリアン:好きじゃなきゃやってられない稼業ですよ!(笑)
みなさん、メイクも特徴的ですが、どのようなところにこだわっていますか?
エスム :ドラァグクイーンの中には、その日の気分やイベントのテーマなどに合わせてメイクを変える人もいるんですが、私は25年前から同じメイクです。というか、それしかできない(笑)。つけまつげと目が大きいのが特徴・・・かな。
ドリアン:私はデビューしてからしばらくは同じメイクばっかりしていたんですけど、ある時を境にいろんなメイクを試してみるようになったら、それがすごい楽しくて。私のテーマは「いかに化けるか」。すっぴんが想像できないくらいしっかり化けて、お客さんを「ワッ!」と驚かせたいというのがありますね。
ホイみ :私はエスムさんほど突飛なメイクでもなければ、ドリアンさんほど多角的なメイクもしてなくて、割と普通の昭和おばちゃんみたいなメイクに着地しようと思っているので、あんまりメイクに関しては冒険していないです。ちょっと濃いめのナチュナル。
ドリアン:ナチュナルでは無いけど、私たちに比べたらね?60〜70年代の映画に出てくる、場末のスナックのママみたいなイメージよね。
エスム :だからホイみはおじさん受けがいいのよね〜。
ドリアン:エスムさんと私のメイクは本当に男性ウケが悪いんですよ。目も「ギョッ!」としてるんで。
ホイみ :それで私がスッと出てくると妙な安堵感というか、ホッとしている人もいるよね。
ドリアン:「ようやく美人が出てきたよー」みたいなね?おじさん達が安堵のため息をつくっていうね?
一同 :爆笑
コロナ禍により、イベントやライブも中止や延期になっていますが、これからグループとしてやっていきたいことはありますか?
ドリアン:やっぱりライブですよね?
エスム :そうねー。オンラインの無観客ライブはやったけど、リアルなライブをやりたい。5月に新曲の「地べたの天使たち」を配信リリースしたんですけど、まだお客さんの前で披露できていないんですよね。
ホイみ :ライブができなくなって、本当にお客様の前でパフォーマンスすることと、ライブの大切さがわかったよね。
ドリアン:配信をやって分かったんですが、リアルなお客さんから頂けるエネルギーって凄いんですよ。バイブスというか・・・。
エスム :インストアイベントなんかだと、通りすがりのお客さんに見てもらえることがあるけど、オンラインで通りすがりの方に見ていただくのはなかなか難しいよね?前から応援してくださっている方が、情報をキャッチして観ててくださることがほとんどなので。不特定多数の方に観ていただける機会がないのは寂しいですね。
ホイみ :でもやりたいことはたくさんあるよね?ミュージカルみたいなこともやりたいし、ラジオもそうですし・・・。
ライブやイベントを行っていく上で裏方の方と一緒にどんなことを心がけて関係性を作っているんですか?
ドリアン:それはもう、「感謝」。これしかないです。
エスム :基本的に私たち3人とも・・・あ、ホイみはわからないけど(笑)、スタッフのみなさんがいて下さるから、ステージで好きなことをやれる、パフォーマンスをさせていただけていると思っています。私、昔、何年かLGBTQのパレードの運営をやったんですけど、それがすごく大変で。
ホイみ :体験しているからこそわかる苦労だよね?見る方は本当に華やかな部分しか見ることがないけど、それを実現させる裏側にはものすごいスタッフの準備があるんだもんね。
エスム :事前にやらなきゃいけないこと、調整しなきゃいけないことが死ぬほどあって、当日は朝5時に集合して、日中は会場を駆けずり回って、もうクタクタ。イベント運営やスタッフさんの大変さが身にしみてわかったので、自分がイベントに出演する際には、小さなことで文句を言わないこと、スタッフさんの手間を増やすような注文はつけないこと、自分でできることは自分でやることを心がけています。あとは「挨拶」!会場に入るときと帰るときは、必ずみなさんにご挨拶します。
ホイみ :そういう人として当たり前な礼儀だとか姿勢は、毎回エスムさんから本当に教えていただいています。
ドリアン:ドラァグクイーンってそんな大層な仕事をしているわけでもないし、基本的に全部自分たちでやらなきゃいけないっていうベースがあるんです。だから「自分のことは自分でやる」っていうのが染み込んでいるんですよね。(ホイみさんを見ながら)なので女装デビューしてたかだか2〜3年でバーンて表に出た方には、そこのところがちょっと分からないのかもしれないですね・・・。
一同 :爆笑
エスム :でもまあ、ちゃんとしてる・・・よね? 他人への接し方は基本丁寧だし。悪気なくナチュラルに失礼なことを言うことはたくさんあるけど(笑)。
ホイみ :決して他人に災禍を与えるようなタイプではないです!売れちゃったらわからないけど(笑)。
ドリアン:売れたらこの人はわからない!「楽屋寒いんだけど〜!!」とか言い出すと思う(笑)。
エスム :あ、ごめん。よく考えたら、私、ひどい態度とられたことあった(笑)。1年半前に、あるバーでライブをした時、ホイみが最初にソロ曲を歌ったんだけど。
ホイみ :マイクの不具合で、お客さんのノリが悪かった・・・
エスム :いや、まず歌詞が飛んだのよ(笑)。
ドリアン:歌詞が飛んだ瞬間マイクのせいにして。
エスム :ふだんは丁寧語なのに、いきなりタメ口で、隣にいた私に「ねえ、マイク替えない〜??」って言って、その「具合が悪いマイク」を私に渡し、私のマイクを奪って歌い・・・。
ドリアン:そのまま、そのマイクを離さず・・・(笑)。
エスム :その次私がソロ曲を歌う番だったんですけど、そのまま入らないマイクで歌わされるという。
ドリアン:そういう人です。この人は。ホイみがいかに、踏ん反り返っていくか!っていうのも楽しみの1つです。
ここ最近、SNSなどの普及により、LGBTに関する知識が以前よりも浸透し、2019年の紅白歌合戦にはレインボーフラッグが登場しました。世の中の理解が進みつつあると思うのですが、この数年で、特に変化を感じたことはありますか?
ドリアン:まず、女装が3人でユニットを組んで歌をリリースできたということをとっても、でもう時代が変わってきているという証拠だと思うんですよ。その歌をみなさんに聴いて頂いて、それで大型ショッピングセンターに呼んでもらってイベントに出ることができるっていうので本当に実感しますね。
エスム :LGBTQに関することがメディアにとりあげられる頻度やその内容、カミングアウトした際の相手の反応などももちろんですが、八方不美人の活動に関して言えば、たしかに、ドラァグクイーンユニットが、昼日中、さまざまな人が集まるイベントで歌うという機会を設けていただけていること、それがわりと好意的に受け止めていただけていることに変化を感じますね。中には苦々しく思っている人もいるかもしれないけど(笑)。
ホイみ :10年前とかドラァグクイーンを昼間に出すなんてあまりなかったよね。お昼のお茶の間に出せるような状況でもなかったし。夜のcultureとしては受け入れられたけど、お昼に出てこられるっていうような感じになったのは、ここ10年くらいだと思う。
ドリアン:それは社会がだんだん変わってきたのもあるし、先輩達が戦ってきてくれた結果だとも思うんですよね。マツコ・デラックスさんだったりミッツ・マングローブさんの星屑スキャットさん達のような先輩達のおかげでその恩恵に預かれていると思いますね。
ホイみ :我々も更に次の世代の若い女装の方々が活躍できるように、切り拓いていきたいですね。
エスム :あと、「世の中、いろいろな人がいる」というのを、これからもポップな形でお伝えしていけるといいなあと思います。
最後に、今後に向けての抱負やファンの皆さんへ向けてのメッセージなどをお願いします。
エスム :及川眠子先生と中崎英也先生という、日本を代表する先生方に作っていただいた八方不美人の曲を、もっとたくさんの方に知っていただきたい、聴いていただきたいと思っています。どの曲も、詞の内容もメロディーも本当に素敵なので、一度聴いていただければ、良さが伝わるはず!
ドリアン:そして、やっぱりいつか紅白出たいよね。
エスム :あと、コロナ禍でしばらくお客さんの前で歌うことができなかったのですが、これからは精力的にライブを行っていく予定です。こちらもよろしくお願いします!
ありがとうございました!!