仕事の流儀 株式会社さいたまアリーナ 大立目 司

FEATURE

株式会社さいたまアリーナ
営業部・営業戦略課マネージャー
大立目 司

その道のプロが切り開いてきた道を掘り下げる“仕事の流儀”。今回はさいたまスーパーアリーナで営業戦略課マネージャーとしてイベントの誘致などを行っている大立目司氏にお話を伺った。

みんなのターニングポイントになるようなイベントを開催したい

 

──改めて、さいたまスーパーアリーナとはどのような会場でしょうか?

5千人のホールモード、1万人~ 2万人のアリーナモード、そして3万5千人のスタジアムモードなど、世界初となる可動客席のムービングブロックを移動することでキャパシティを変えられ、ご利用される皆さんのご要望に合わせて、多種多様なイベントに対応できる多目的な会場です。建築部門で2001年にはグッドデザイン賞を受賞、アメリカ人建築家のダン・マイス氏がデザインし、独特のセンス溢れる印象的な構造は、お客様がご来場の記念に写真を撮って頂くにも良い会場かなと思います。

 

──さいたまスーパーアリーナに入社したきっかけについてお聞かせください。

もともとイベントが好きで、とりわけ音楽に携わる仕事をしたいと考えていて、学生の時からイベント運営の仕事をしていました。最終的には人に感動を与えるライブに関わる仕事って楽しそうだなと思ったのと、実家がさいたまスーパーアリーナから数分の所なので、この街にアリーナができることを知ったとき、これはまさに僕にやれといわれてる感じがして、前職の株式会社ケンウッド(現 株式会社JVCケンウッド)を辞めて思い切って入社しました。この会場が誕生し、どんな風にこの街が変わって行くのか未知の世界だったので、ここに人が集まる姿を想像するとわくわくしましたね。

 

──大立目さんは具体的にどんな業務をされていますか?

メインはイベントを誘致することです。各プロモーターやテレビ局に今後どんなイベントがあるのかをリサーチした上で、会場のスケジュールにリンクさせイベントが開催されるまでの調整業務を行っています。2016年からは今までの業務に合わせて戦略的な視点も加え、開業15周年が過ぎ、日本の中で知名度も上がってきたので、今後はワンランク上を目指し世界に通用するアリーナとしてブランド化できるよう試行錯誤しています。

 

ワンランク上を目指し、
唯一無二のブランド化を図る

 

──ワンランク上を目指す為に、どんなことをされていますか。

海外のアリーナを視察に度々出張に行くのですが、欧米ではVIP対応がしっかりしていて、コンサート前でもお客様が楽しめる空間を創っています。それをさいたまスーパーアリーナでも導入して日本に普及したいです。例えばアリーナの会員の方がご来場する時、開演の1時間ほど前からVIPラウンジに入れて食事や飲み物などを提供し、コンサートを見る前から楽しんで、リラックスしてもらう時間を創れないかなと。あとはトイレや駐車場も混むので、会員になれば駐車場も事前に予約できたりとか。他にもよりイベント感が出るようにと、館内ショップのメニューボードをLED化による演出をしたり、オリジナルグッズも考案し、ここでしか提供できないワンランク上、唯一無二のブランド化を図っていきたいと考えています。

 

──今までさまざまなイベントに携わったかと思うのですが、特に印象に残っているのは?

2003年「MTV VIDEO MUSIC AWARDS JAPAN 2003」が印象に残っていますね。会場にはメインアリーナ、コミュニティアリーナ、展示ホールの3つの空間があり、そのイベントではすべての空間を使用し、ロビーも含め全館を使いました。会場全体を活用したイベントは当時初めてだったので、すごいインパクトがありましたね。海外からもトム・クルーズや有名アーティストが何組も来て、そのケアやバックヤードの動きとかも身近に感じることができ、盛りだくさんな内容でした。ここ、さいたまスーパーアリーナだからこそ出来るイベントだったかなと思います。動員は1万5千人で、初めてアリーナスタンディングで開催しました。

 

──イベントの誘致のみならず企画もされていますが、その際に心がけていることは?

一番大事なことはダブルブッキングを避けることです。年間でイベントをブッキングするにあたり、幅広い客層に来て欲しいので、年齢層や男女比などを考えより多くの方がアリーナに来られるように心がけています。例えば社内的にもビール祭りとか、スポーツフェスティバルなど近隣のファミリー層向けのイベントにも力を入れています。それらも含め今後はスポーツやグルメに音楽を融合したイベントを開催したいと考えています。また、格闘技の聖地として、RIZIN(旧PRIDE)やK-1の復活も受け、格闘技の文化も絶やさぬよう後押ししたいと考えています。

 

──格闘技の他にスポーツイベントも多く手がけていますよね。

昨年12月にIPTLという世界のトッププレイヤーの試合が見れる国際テニス大会を開催しました。初回ということもあって手探りでしたが、今後も続けて最終的に2万人を動員できるイベントにできたらと考えています。2020年には東京オリンピックのバスケットボールの会場になること、またBリーグも開幕し、リーグが盛り上がるよう何か協力できないかなと考えながら、少しずつでもバスケットボールのシーンが高まるよう後押ししたいですね。

 

さいたまスーパーアリーナの
東京オリンピックでの役割

 

──東京オリンピックに向けて、アリーナとして考えていることはありますか?

海外の方が多く来られると思うので、会場サ
インの見直しや安全管理、トイレなども改善したいですね。特にトイレについては、和式が多いので洋式に早急に変えたいと考えています。社員全体で五輪成功に向け、これから対応策を考えたいと思います。

 

──東京オリンピックでは今、会場問題が上がっていますが何か思うことはありますか?

新設の有明アリーナに関して、バレーボールをメインにいわゆる体育館仕様で造られてしまうようですが、レガシーとしてコンサートやスポーツイベントなど多種多様なイベントに対応できるように造ってほしいなと思います。運営に関しても、スポーツイベントを優先せざるを得ないようなブッキングになるかもしれませんが、経営に一番寄与してくれるのはコンサートだと思うので、コンサートがうまくブッキングできるよう運営してもらいたいと思います。特に今は首都圏のコンサート会場が不足しているので。さいたまスーパーアリーナのスケジュールに関しては、土日・祝日は2年先まで予約が埋まっています。日本でも平日にコンサートを観に行くような文化になって欲しいと思うので東京代表として有明アリーナには、全国の会場を引っ張って行けるようになって欲しいですね。

 

他業種とのつながりで新たな
可能性が広がるイベント業界


──
話題になるようなイベントを数多く開催されていますよね。

今年1月にGReeeeNが10周年でイベントを行って、本人たちが初めて表舞台に出るということで注目されましたね。ニュースでも取り上げられて嬉しかったです。あと今年の5月に4回目となる「VIVA LA ROCK 2017」を行うことが決定しました。3年前から音楽雑誌「MUSICA」の鹿野さんやディスクガレージさんと共同で、埼玉県初の屋内最大ロックフェスを開催しています。埼玉はライブハウスが多いですが、大型フェスができる環境がなかったので、初めての試みとなりました。このフェスをきっかけに若い世代が音楽を始めるきっかけになればいいなと思ってます。フェスの企画としてオーディションも開催していて、高校生の軽音楽部をターゲットに顧問の先生と連携を取ってオーディションを行い、フェスの本番日に優勝者が演奏するという企画です。いつかオーディションを勝ち上がったアーティストに、「昔、ここでやったんだよな」って、トップアーティストになってメインアリーナで演奏してもらえたら嬉しいですね。また、15周年時に音楽とグルメを融合したイベントをやろうと、「肉ロックフェス」を開催しました。今後もそのような音楽とグルメの融合イベントを開催できたらと思います。肉ロックフェスをきっかけに、さまざまな業種の方々と繋がりを持つことができたので、いろんなアイデアを出し合って新しいイベントを開催できたらとも思います。

 

──お客様にはさいたまスーパーアリーナでどのようにイベントを楽しんで欲しいと思いますか。

ライブ、格闘技などはさいたまスーパーアリーナで観たいなと思っていただけるようにしたいです。そのためにもお客様には積極的に、会場についてのリクエストを取り入れたいです。方法としては、スマートフォンなどで簡単にお客様のリクエストが聞けるようにできたらと考えていますね。スマホを使っている世代が、イベントにご来場するメインターゲットなので、その人たちのダイレクトな意見を伺い、今後のイベントや会場創りに役立てていきたいです。

 

about さいたまスーパーアリーナ
©SSA

さいたまスーパーアリーナの外観。近未来的かつスタイリッシュなデザインはアメリカ人建築家、ダン・マイス氏が担当した。2001年にはグッドデザイン賞を受賞。

 

国内で最大の格闘技ワールドカップ である「Dynamite! !」。毎回、白熱した試合が繰り広げられ、会場のボルテージが最高潮にまで達する。

 

埼玉県初の屋内ロックフェスである「VIVA LA ROCK」。毎年5月に開催され、音楽シーンの最先端を走るロックバンドのライブが繰り広げられている。

 

大立目 司 PROFILE

大学時代からイベント関連の仕事を行い、1999年にさいたまスーパーアリーナに入社。イベントの誘致営業、ブッキングを担当。多種多様な新しいイベントが開催できるよう、新規の会社へアプローチを仕掛けたり、各イベントの日程を調整し1年を通し子供からお年寄りまで幅広い層のお客様が来場されるようスケジュールのデザインも行っている。2016年から営業戦略課マネージャーに就任し、さいたまスーパーアリーナのブランドをワンステップ上のレベルにあげるべく、さまざまな戦略を検討している。