Relay Column ライティングビッグワン株式会社 村田望
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有明アリーナが「Legacy」として生み出した新たなる感動を期待します
今回取り上げる事例は前号の1月号に引き続き、有明アリーナについてお話したいと思います。2020年の東京オリンピック・パラリンピックの参加が見込まれる最大の催事はスポーツイベントとしてだけではなく、文化、芸術の祭典としての位置づけがされています。
本番まで3年余りとなり、オリンピックのメイン会場である国立代々木競技場も急ピッチで建築が進んでいます。ここにも我々音楽業界にとってのフィールドがあり、次に浮上したのが東京における3競技の会場見直しの議論です。競技施設に求められるファクターとして
「Legacy(レガシー)」という言葉が表に出て来ました。
「Legacy」とは「過去・先人によって築かれた精神的、物理的遺産」近年は「後世に評価される事を期待される事業」とされています。
注目すべきは後段にあります。我々が記憶している1964年の東京オリンピックはインフラ五輪と称されるように、国勢を背景に高速道路、新幹線の整備、そして数多くの競技施設が新設されました。現在も稼動しているイベントのコンサート会場として日本武道館と国立代々木競技場があります。
これらの施設は個々の競技の聖地として、アスリート達のあこがれの場所として信頼と尊敬の念を得ています。一方で我々エンターテインメント関係者は、パフォーマンスの会場としてライブシーンをお客様に対して届けています。ここにも「Legacy」 を亨受している姿があります。競技スポーツがもたらす感動とその場で催されるコンサートイベントが与える感動は両論となって時代を超え「Legacy」として認知されていくでしょう。
紆余曲折の見直し作業を経てバレーボール会場として、有明アリーナの新設が決まりました。その経緯の中でコンサートプロモーターズ協会の動向や関わり方に、興味深い報道がありました。
現在においての「オリンピック後の施設の運営、維持についての貢献」というスタンスからは少し踏み込んだ形になるのかどうか ? 是非注視していきたいと思います。この建築プロジェクトはデザイン、基本設計、実設計として進んでいくと思われます。前号で述べられている4つの基本ファクター(①吊り物ができる ②物資の搬入出ができる ③重機フォークリフトが可能④避難動線の確保)の中において、照明としての必須条件である「十分な電源の確保」を加えて大会後の施設のあり方に反映されていくことを望みます。有明アリーナが本来の競技施設としてのクオリティを保存し、日本のライブエンターテインメントの発展に寄与するランドマークとして完成されますよう、願っております。
PROFILE
1964 年の東京オリンピックや1966 年ザ・ビートルズの日本武道館公演を観客として鑑賞。この頃から照明の仕事を開始。1979 年2月にライティングビッグワン株式会社設立に参加し以来、リック・スプリングフィールドから始まりエリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ビヨンセ、イル・ディーヴォ、ジャクソン・ブラウン、X JAPAN などの公演の照明を手掛ける。