深川麻衣さんが笑顔禁止で演じた映画『おもいで写眞』の見どころは? 熊澤尚人監督からのコメントも!

映画『おもいで写眞』が2021年1月29日(金)より公開されます。乃木坂46の元メンバーで女優の深川麻衣さんが意外な役柄にチャレンジしている本作。その見どころをご紹介します。さらに熊澤尚人監督に熱い想いを綴っていただきました。

映画『おもいで写眞』の深川麻衣さん
映画『おもいで写眞』主演の深川麻衣さん

どんな映画?

深川麻衣さんが演じるのは、東京で夢破れ富山へと帰ってきた結子。正直だけど意地っ張りで不器用な女性です。高良健吾さんが演じる幼なじみの一郎には心を開く事が出来るのですが……。 

映画『おもいで写眞』の高良健吾さん
幼なじみ・一郎役の高良健吾さん

ある日、結子は一郎が働く町役場の仕事を頼まれます。それはちょっとお節介だけど心優しい一郎が考えた、お年寄りの遺影写真を撮影するプロジェクトでした。
早速、お年寄りのお宅を一軒一軒訪問して写真を撮ろうとする結子ですが「縁起でもない」と追い返されてしまいます。

映画『おもいで写眞』の深川麻衣さん

そこで結子は、お年寄りの思い出の場所で写真を撮る事を思いつきます。
写真は真実を写し出すもの。嘘が大嫌いな結子には嘘は撮れないのですが……。思い出の場所を共に探し工夫を凝らした写真がきっかけで、お年寄りに笑顔が生まれ、結子の表情も変わり始め、やがて過去や未来さえも照らしてゆくのです。

映画『おもいで写眞』

見どころは?

ずばり深川麻衣さんの表情です! 笑顔がチャーミングで聖母と呼ばれる深川麻衣さんが、熊澤尚人監督に撮影現場で「笑顔禁止」を申し渡され、怒ってばかりの結子の複雑な気持ちを丁寧に演じています。

映画『おもいで写眞』の深川麻衣さんと古谷一行さん

結子は小さい頃からずっと我慢し続けて育ってきたので、口が重いところがあるのでしょう。亡き祖母や母への複雑な思いを抱える結子の心の動きを、深川麻衣さんは不満そうな目や、言葉を飲み込んでしまう喉元、真っ直ぐな視線と瞬き、一郎へのいたずらっぽい目などで繊細に表現しています。
その表情を引き出した熊澤尚人監督が丹念に紡ぎ描く映画です。ぜひ一瞬も見逃さないように映画館での鑑賞をオススメします。魚市場で体当たりで働く深川麻衣さんのレアな姿も観られますよ。

高良健吾さんは幼なじみの一郎を演じますが、映画『アンダー・ユア・ベッド』とは対極の純朴な好青年ぶりで、その巧みさに驚きます。
また、深川麻衣さん演じる結子と高良健吾さん演じる一郎との関係性が堪りません。これはきゅんとしてしまう方も多いのでは?

映画『おもいで写眞』の深川麻衣さんと高良健吾さん

さらに、香里奈さんが町のソーシャルワーカーとして登場します。キラキラな香里奈さんのイメージとはまた異なる、「職場やご近所にこんな先輩がいたらいいな」という感じの母性あるサバけたハンサムウーマンぶりを魅せてくれます。

映画『おもいで写眞』の香里奈さん

そして、お年寄りを演じる吉行和子さんと古谷一行さんが確かな存在感で人生の機微を添えています。

映画『おもいで写眞』の古谷一行さん 映画『おもいで写眞』の吉行和子さん

 

井浦新さんが気さくな居酒屋の大将として登場するのも楽しいところ。こちらもお見逃しなく。

映画『おもいで写眞』の井浦新さん

富山の緑豊かで素朴な街並みの中で人とふれあい、深川麻衣さん演じる結子の頑なな心も少しずつ溶けてゆきます。
熊澤尚人監督の『ニライカナイからの手紙』から通底するあたたかい視点が心地よい爽やかな映画です。

映画『おもいで写眞』の深川麻衣さんと吉行和子さん

あなたなら、どんな場所で『おもいで写眞』を撮りたいと思いますか? 自分らしく輝けた場所、懐かしい風景……。スマホでいつでも写真が気楽に撮れる時代になったからこそ、大切な一枚を選ぶのが難しくなっているかも知れませんね。
コロナ禍により人とのふれあいが懐かしくもある今、映画『おもいで写眞』をご覧になってみてはいかがでしょうか。

熊澤尚人監督が9年前に着想したオリジナルストーリーを元にした映画『おもいで写眞』がついに2021年1月29日(金)から公開。
熊澤尚人監督の熱い想いが伝わる長文コメントが到着しました!

熊澤尚人監督からのコメント

映画『おもいで写眞』の熊澤尚人監督 この『おもいで写眞』のオリジナルストーリーの着想は、遺影写真を扱うカメラマンの新聞記事を見たのがきっかけでした。亡くなっても生前に遺影写真を撮っている人はあまりおらず、集合写真などを引き伸ばしてピントが甘くなった写真が葬儀で使われることがほとんどで、お年寄りたちは縁起でもないと、遺影は撮ろうとせず、苦労されている話でした。では一体お年寄りたちはどんな写真だったら撮ってもらいたいだろう? と考えたのが最初でした。
 本作の舞台は昭和40年代に作られたニュータウンで、昭和レトロ風、色や形に味わいのある団地です。空き家が多い上に一人暮らしのお年寄りばかりが住んでいる説定で、実際に撮影させて頂いた富山の団地は、僕がシナリオで考えていたのと同じ状況の団地で、高齢化、過疎化という現代の日本が抱える一つの問題も描いています。
 実は本作をいち早く見てくれた映画関係者の方に、今回の作品はテーマも主人公の成長の過程も、現実の社会に対して開かれていく、関わっていく形になっていて、映画『ごっこ』という重要な作品を経た上での結実のようにも思えると言われ、成る程と思いました。本作のテーマは映画『ユリゴコロ』や『ごっこ』で描いたマイナスの感情とは違う、人間の善い部分に目を向けた作品ですが、相通じる部分としては、主人公が“許せない”という感情を持ち続けていることです。他者に対する“許せない”という感情は、なかなか消しづらいと思います。でも許せなくて怒っていても、良いことは起きないし、前に進めない。だからと言って許すことは容易でない。だから例え許すができなくても、受け入れられるようになる、という話を描いて見たいと思ったのです。それを今回の映画の主人公の一番大きな柱にしました。
 また、縁のなかった地元のお年寄りの方とどう関わって行くかが物語の重要な柱で、人と人との距離感や関係性を見直すことが大変重要な、今ならではの映画だと思います。また親子ごっこから、親子に負けない絆を結んだ『ごっこ』と同様に、虚実あいまいな中に大切なことが潜んでいたり、嘘の中に実は大きな愛情があるという話でもあります。フィクション、物語の持つ力の面白さを楽しんで頂ければと思います。
 映画公開に合わせ、私が書き下ろした原作小説も発売になりました。映画の中で何枚ものおもいで写眞が映し出されていますが、写っている方たちにどういう記憶や背景があるのか描かれていたり、映画では見れないエピソードなどが読めますので映画と合わせて読んでもらえたら嬉しいです。

PROFILE

熊澤尚人監督熊澤尚人 | (くまざわ なおと) 名古屋市出身。1994年、『りべらる』がPFFに入選。2004年、短編『Birthday』でポルト国際映画祭最優秀監督賞を受賞。2005年、自身のオリジナル脚本による、蒼井優主演『ニライカナイからの手紙』で商業監督長編デビュー。代表作は、2006年『虹の女神』、2009年『おと・な・り』、2010年『君に届け』、2014年『近キョリ恋愛』、2017年『心が叫びたがってるんだ。』など。2017年の『ユリゴコロ』では殺人シーンも交えた人間の深層心理に肉薄。2018年の『ごっこ』は『映画芸術』誌においてベスト6位に選出されるなど、これまでのフィルモグラフィーのイメージを覆す新境地を見せ、新たな代表作となった。

映画『おもいで写眞』2021年1月29日(金)公開

映画『おもいで写眞』チラシ

監督:熊澤尚人
脚本:熊澤尚人、まなべゆきこ
出演:深川麻衣、高良健吾、香里奈、井浦新、古谷一行、吉行和子
公式サイト: http://omoide-movie.com/
©「おもいで写眞」製作委員会

原作小説:『おもいで写眞』

原作小説『おもいで写眞』書影

著者:熊澤尚人
幻冬舎文庫から好評発売中。
https://www.gentosha.co.jp/book/b13375.html

 

Author:Nori Shinozaki(イベントマガジンBANZAI編集長)