the GazettEの15周年記念ライブは、桜舞う圧巻のパフォーマンス!

ビジュアル系バンドとして圧倒的な人気を誇るthe GazettE。2017年は15周年という節目にあたり、3月10日には『the GazettE十五周年記念公演 大日本異端芸者「暴動区 愚鈍の桜」』を国立代々木競技場第一体育館で開催。13,000人を熱狂させた。スタンディングでのワイルドなライブに定評のある彼らだが、スケールの大きい会場で見せる完成度の高さも圧巻だ。今回は3月に行ったライブの様子をじっくりお伝えしよう。

 

Live Report:十五周年記念公演 大日本異端芸「暴動区 愚鈍の桜」

2017年3月10日、15周年を迎えたthe GazettEが、『the GazettE十五周年記念公演 大日本異端芸者「暴動区 愚鈍の桜」』と銘打ったアニバーサリーライブを国立代々木競技場第一体育館で行った。彼らにとって、この会場での公演は3度目となる。この規模の公演を何度も開催できるビジュアル系バンドはそう多くはない。それほど、彼らの音楽、世界観、そしてパフォーマンスは根強い支持を得ているのだ。ちなみに、今回のチケットは数分でソールドアウト。当日は国内外を問わず、熱狂的なファンが集結した。

本題に入る前に、過去に2回行った(国立代々木競技場第一体育館での)ライブについて、少しだけ触れておこう。

彼らは、作品を生み出すたびに、ライブでもその世界観を綿密に作り上げていく。1回めの公演は2008年4月19&20日 代々木第一体育館の2DAYSだった(この時は大阪城ホールでの大阪公演も開催)。2007年7月にリリースしたアルバム『STACKED RUBBISH』を掲げ、ほぼ1年を費やして行ってきたツアーの締めくくりである。“TOUR 2007-2008 STACKED RUBBISH [Pulse Wriggling To Black] GRAND FINALE 「REPEATED COUNTLESS ERROR」”というタイトルの公演は、メンバーが車でクールに移動。車を降りると、そのまま会場に向かうという映像を使用した演出で、テンションを上げていくオープニングが印象的だった。

2回めとなったのは昨年、2016年2月28日に行った“the GazettE LIVE TOUR 15-16 DOGMA FINAL 漆黒”。2015年8月にリリースし、重厚でダークネスなサウンドが話題となった『DOGMA』を掲げたツアーのファイナル公演だ。広い会場を活かし、ペンタグラムのように設置されたミニステージにメンバーが登場するというドラマチックなオープニングで一気に魅せられてしまう。ライブ・タイトルそのままの暗黒でディープなサウンドは、荘厳な情景を作り上げ、会場を異様なまでに黒く染めた。

ライブの熱量はいずれの公演もかなりのものだが、毎回違うコンセプトで構築してくるところは、こだわり派の彼ららしい。

ライブハウスでプレイしてきた曲を大会場の規模感で演奏!

さて、今年3月10日はどんな景色を見せてくれたのか……。この日は、15年という歴史を振り返るべく、バンドがかつて“大日本異端芸者”を含んだバンド名で活動していた時代の楽曲を中心に披露された。アルバムのコンセプトをまとった過去の2公演と違い、メモリアルな要素が大きいこの日は、暗転と同時に天井から桜吹雪が舞うという粋な演出で幕を開けた。しかも、アリーナ席の後方までまんべんなく振らせるという華やかさ。続いて太鼓の音に合わせて派手なレーザーが飛び交う。その後、ドラムセット後方からメンバー5人がせり上がると、歓声はいっそう大きくなった。

確実にテンションを上昇させるオープニングのマジックにより、観客は瞬時に大日本異端芸者の世界に巻き込まれてしまう。メンバーが所定の位置にスタンバイし、まずは「貴女ノ為ノ此ノ命。」で本編がスタート。この曲を演奏している間も、ハラハラと桜吹雪が降り続けた。セットリストはファンからのリクエストをもとに組まれたもので、メンバー自身は「予想外だった」というレアな曲に票が集まったとのこと。

2曲めの「舐~zetsu~」では、「代々木! 声を聞かせてくれ!」とRUKI(Vo)が絶叫。3曲めの「十四歳のナイフ」は出だしで手拍子が起こり、前半から熱い一体感が生まれていった。途中、「オン・ベース! REITA!!」と、RUKIがREITA(B)を紹介。REITAがセンターに歩み寄り、ベース・ソロを披露する場面も。通常のコンセプチュアルなライブでは、まず見られないライブハウスを彷彿させる光景だ。そもそも、ここでプレイされていく楽曲の多くは、バンドが小規模なハコを中心に活動していた時代のものばかり。それが、当時とは比べものにならない規模感で鳴らされているのだ。

しかも、4曲めの「センチメンタルな鬼ごっこ」は、ライブでは数えるほどしか演奏してこなかったという激レアな1曲。いずれにしても、現在のthe GazettEがプレイすることで、新たなパワーが吹き込まれたような仕上がりだった。

中盤には、「飼育れた春、変われぬ春」や「Last bouquet」など、メロディアスな要素を取り入れた楽曲が並ぶ。麗(G)、葵(G)も、クリアなギター・サウンドでじっくり聴かせる。最近ではヘヴィーな音作りが中心だっただけに、かなり新鮮だ。

また、最近ではあまり聴けなかったバラード曲「Cassis」では、RUKIがギターを弾きながら歌うスタイルで魅了。照明もステージを赤く染め、楽曲をもり立てた。続く「ザクロ型の憂鬱」でも、やはり赤いライトが活躍。独特の空気感で場内を包み込んだ。

後半は、彼らのライブでは鉄板とも言える人気のハードチューン「COCKROACH」を含むアグレッシヴなブロック。満員の客席ではヘドバンが展開――もちろんヘドバンやジャンプは、これ以外の曲でも起こっていたが――客席がうねっているような迫力を生んだ。本編ラストは彼らのライブで多くのエンディングを飾ってきた「関東土下座組合」。メンバーは広いステージを走り回り、スタンド席にも視線を注ぐ。前半までは暴れるより聴き込むオーディエンスが多かったが、後半はいつものthe GazettEらしいノリで締めくくられた。

アンコールでは、曲を聴き込む観客の様子を見ていた戒(Dr)から「みんな楽しそうな顔してるけど、体がついていってないんだよね(笑)――わかってると思うけど、ここからだから! もう様子なんか見るんじゃないぞ! いくぞ! かかってこい!」と煽りが入る。アンコールでも初期の楽曲が次々に飛び出したが、すっかり体がほぐれた観客は、大きく体を動かして反応。「泥だらけの青春」「赤いワンピース」など、テンポのいい曲で、たちまち熱狂が舞い戻ってきた。

そして、RUKIは「今日のライブを発表してからメチャメチャ長かった。あとメッチャ緊張した(苦笑)」と、記念すべき日を迎えた思いを語った。アンコール後半には季節にピッタリの「春ニ散リケリ、身ハ枯レルデゴザイマス。」、そして「☆BEST FRIENDS☆」が飛び出し、ラストには「LINDA~candydive Pinky heaven~」が選ばれた。長くファンに愛されてきた曲で、これを聴くと“あ、もうライブが終わるんだな”と感じる人も多いはず。アンコールも終了し、お祭りもここまでか……と思われたが、この日はまだまだ終わりではなかった。ダブルアンコールに応えた彼らはもう1曲「未成年」をプレイ。

曲の後半からは再び天井から桜吹雪が舞い落ちてきた!春という季節さえ記念日の見事な演出に変え、感動のアニバーサリーは完結した。終演後には、各メンバーからコメントが発表されたが、全員異口同音にファンへの感謝を伝えていたのが感動的だった。過去の曲を現在の実力で見事に表現しきったthe GazettE。「意外にこの曲カッコいいじゃん」とメンバー自身も語っていたように、初期から自分達が信じる音楽を貫いてきた姿勢が伝わってくる。8月19日には「BURST INTO A BLAZE 3」という野外ライブを富士急ハイランド・コニファーフォレストで開催する彼ら。オープンエアでの公演をどう料理するのか、また、どんなお祭りにしてくれるのか非常に楽しみだ。

(text:海江敦士)