コロナ禍を羽ばたく「PHOENIX」大黒摩季の2020年。Special interview
|10ヶ月連続の新曲リリース、全国ツアーと50歳にして精力的に活動を続け、2年ぶりのオリジナル・アルバム「PHOENIX 」のリリースを12月23日に控える大黒摩季。コロナ禍につつまれた2020年とNEWアルバムについて話を聞いた。
まず2020年を振り返ってどんな年でしたか?
大黒:多くの人は新型コロナウイルスにいろんなものを奪われたり翻弄され、早く過ぎ去ってほしい忘れたい年っておっしゃるんですけど、私にとってみれば、実り多き、素晴らしくタフでハイパーないい一年でした。
それはどのようなところでお感じになりますか?
大黒:もともとボーカリストなので、感染防止対策も普段からやっていたっていうのが大きいですね。マスクやネックウォーマーも真夏でもしていて職務質問されるくらいでしたし、いつも1対何千でライブして、ウィルスを吸い込むとか色々リスキーな部分も多いですから、それにも負けない免疫力を保っていないといけないわけです。だから普段から手を洗う、うがいする、極力除菌する。まずそこがストレスじゃないっていうのが、みんなより若干のびのびしていられた要因かなとは思います。2020年こそは、また新しい恋をしようと思って張りきっていたんですけど(笑)、コロナが流行してステイホーム・自粛になって、「それはないでしょう~~っ!!(泣)!!」というのはありましたが(笑)。根本的にミュージシャンやクリエイターって引きこもり気味なので、自宅で過ごすのが得意な方だったっていうのもあります(笑)。おうちでずーっと映画を見ていたり、それを見ながら触発されるとすぐ曲を作ったり、お勉強したり、猫たちと一緒に戯れたり、地味に植木をいじったりするのが好きだし、おうち行動がわりかし好きなんです。サーフィンもゴルフも旅もみんな好きなんですけど、両方楽しめるんですよ。あとは波乱万丈な人生のせいか、ジタバタしないんです(笑)
肝が据わってますね(笑)
大黒:というか、悩んでも無駄じゃないですか(笑)。若い方とかチャンスや時を待ちながら悩むのは学びとして意義があると思うんですけど、コロナに関してはワクチンや治療薬が見つかるまでは安心できないし、動きも決められない、的なことでどうにもなんないし。でもワクチン完成の背中が見えているわけだから、終わりの背中も見えてくるわけで。自分の病気や不妊治療との戦いの方が、何年も先が見えなかったことを思えば、全然いいというか。そして母が介護施設にいるものですから、医療関係者の方とか介護施設の方たちの苦労や不安を思えば、自分たちの不安なんて全然比じゃない。だからその皆さんへの感謝も含めて、まずは自分が感染しない、ウィルスを拡散する側にならないこと。そう思うと、Stay Homeも引きこもるのが得意だから何とも思わない。私にとってみれば、2020年はミュージシャンも仕事を奪われたので、レコーディングにも人気ミュージシャンがすぐ来てくれてラッキーだったとか、せっかく時間があるんだからって、毎月のシングル連続配信をやったりとか、普段できないような事がアグレッシブにできちゃいました。基本的に時代がわたしについてきたなって感じなんですよね~(笑)だから音楽的には凄くいい年でした。
ステイホーム・おうち時間を有意義に過ごせたという事ですね。
大黒:そうですね。DIYもやるし(笑)、何でもひとりでやれちゃうし。本当に普通の年よりハイパーでした。毎月シングルリリースするなんてあり得ないですもん。
その中で今ツアーもやられていますが、コロナ禍でツアーも一回中止になりました。そんな状況でのファンに対する思い、ライブに対する思いはありますか?
大黒:本当にこんなにお客様が愛しいと思ったことはないですね。ライブも初日の越谷なんて、ある意味こちらも命がけ、覚悟の上で行く。お客様も感染防止対策を入念にやっているとはいえ、会いたさもあるけれど、不安も大きい。その分、会ったときのファーストインプレッションはその日のうちに恋に落ちるくらい、まるでロミオとジュリエットのように愛情も含めてお互いを求めて会いたくてたまらなかったっていう感じでした。これほどの逆境もないし、これほどの飢餓感もないし。何事も障害がある方が燃えるじゃないですか、愛情なんて特に。それが初日はすごかったですね。越谷のお客様が「無事だったよ、大丈夫だったよ」って言ってくれたから、二本目の名古屋のお客様が「あらそうなんだ、行ってみよう」って思ってくれたのもうれしかったですね。
ご自身がお客さんにエネルギーとか元気を与える以上に、大黒さん自身がファンの方から元気、勇気をいただいたんですね。
大黒:はい、それはお互いの光合成みたいなもので、会場の中で思いや感情が対流して、それでお互いが高まっていくものだと思うんです。お客様の笑顔が私のエネルギーだったりしています。もともと「PHOENIX TOUR」は、この長いコロナ禍で委縮してしまった心を開放し、楽しむ力・願う力・望む力を取り戻すことで笑顔が増えれば免疫細胞も活性化する、だから感染防止対策の準備が整い次第、四の五の言わずに愛とエナジーを届けてこようと。心が動かないと体も思う様に動いてくれないですから。ファンの皆さんの笑顔が私のエネルギー源でもあるので、コロナでエンターテイメント業界は全リスク回避チームとwithコロナチームと二手に分かれているので、私はwithコロナで生きていこうと覚悟しました。
あとはスタッフを生かしたいっていう思い。ミュージシャンもスタッフもアーティストが動かないと動けないじゃないですか。だからみんなで止まっていてはこの人たちが死んでしまうと思ったんです。私は見過ごしたり見守るのが不得意なので、withコロナの道を選び、スタッフにも全員に言いました。「もし怖かったらついてこなくていいよ、それは当然のことだから気にしないでね。そこは働きたい仲間を誰か紹介して」って。でもみんな止まってはいられないって言って、大黒組のツアースタッフ全員が私についてきてくれました。それも感動でした。
スタッフとの絆を確かめられたきっかけでもあるわけですよね。
大黒:すべての絆を感じました。愛の中にいるとね、愛が見えなくなっていくんですよね。空気と一緒。呼吸が苦しくなって、はじめて空気って大切だなってあるじゃないですか。それと同じように、音楽もぬくもりも繋がりもみんな奪っていったのがコロナだから、一つになったり、繋がったり、それから確かめ合ったりする時間を共有するっていうのを奪い返した気がしました。「無邪気な笑顔を守りたい あなたを守りたい その為ならば火の中だって怖くない」12/23にリリースするアルバムに収録されている「PHOENIX」の中に出てくる「何度でも生まれ変わる I’m your PHOENIX」っていう歌詞なんですけど、ここはそのまま今の気持ち。今も危険をはらんでいますけど、リスクのない人生もなければ、危険のない世界なんかないから。いいじゃん、まだ新型コロナウイルスって相手が分かったんだからって思います。
私からすると、母に感染すると怖いから、毎週のようにPCR検査しますし、一層体調には気を遣っていますが、見えないウィルスだから防ぎきれはしない。だけど怖くない。今まで死に目にあったりもっと怖い思いをしているから。絶望もしたし、もっと大事なもの奪われているし。コロナが奪ったものはいわゆる「機会と場所」ですよね。繋がりというか。それはコロナが収まればすぐ100倍返し1000倍返し出来るっていうことなので、ただ待つ時間は長いけれど目標をいっぱい作って前のめりに走っていれば、時は早まると思って、毎月作る、チャンスがあれば歌う、なんでもやるってやっていたら1年あっという間でした。
大黒摩季さんって姉御肌っていうイメージを持っている人も多いと思います。元気づける言葉とか、そういったものを常に投げかける人だと感じます。その強さ、優しさはどこからくるんですか?
大黒:自分の弱さを知っているからです(笑)。多分。
それは病気をされたり、いろんな経験をされて蓄積されたものが今言葉になって出てきているということですか。
大黒:経験則で越えてきたっていう事実は、自分を信じる、信用するには値することなんですけど、根本的にわたしの精神はよく言えばナイーブで、悪く言えばエキセントリックで自分でも読めないやっかいな性格。でも物作りは仕方がないんです。感性を拾うまっさらな心でいると、いらないものまで入ってくるんです。その度に翻弄されて勝手に傷ついたり絶望したりとかして。かと言って助けてって素直に言えない。強がりで意地っ張りだから。そこで頑張っているのを見た人が姉御って言っているだけであって、わたしは誰かの上に立とうなんて一度も思ったことがないし、むしろその辺の観葉植物くらいの存在にしてほしい(笑)。でも「夏が来る」にしても「別れましょう」にしても、その摩季Bみたいな、面倒くさい人の毎日に、摩季Aが出てきて、そこは頑張っていこうよって一行入っているだけで、ほとんど摩季Bの世界を共感されているだけだと思います。多分摩季姉って呼ばれる要因は、とにかくやり抜くところじゃない?と周りは言っています(苦笑)。もうめげちゃうって言いながら、欲しいものが自分で明快になると、絶対逃したくない。諦めないとか、負けないとかって、しがみ付いてるとは思ってないんです(笑)。気がついたらもう既にそこに没頭していて、その集中力たるや自分が壊れるくらいに夢中で、最後はいつも燃え尽きて灰になっているんです(笑)そうなんです、いつも。自分の弱点や弱さを知っているから補填できるんです。
でも自分の弱さを知るってなかなかできることじゃないですよね。強がる人がほとんどだと思いますが・・・。
大黒:わたしは1位とか、勝ったことがないからです(笑)一番を目指したのに万年二番とか。いつも誰かを追いかけて、届かず、及ばず。そんな人生だから。でも一番の背中をよく見ているんです。だからこそやり残したことができるんです。例えて言うなら私は織田信長でも明智光秀でもないんです。そこの軍師の竹中半兵衛とか。全部見ていて。あーやばいかも、ここと組んだらいいかもみたいな。織田信長の背中を見ているから、織田信長を誰よりも知っている、っていう人なんだと思います。わたしは若くして天才に会いすぎて、天才じゃないことがよく分かったので。わたしは頑張り屋の凡人だよねっていう局面がいっぱいあって。でも音楽以外に好きなものがないから、音楽ほど夢中になって気づいたら別の人になっているような、あんなミラクルなものはないってやっぱり思いますから。結果的にその中で好きでいつづけるために、自分をそこに合わせていかなきゃいけなくて。でもおかげで強がってぽっきり折れていないので。自分で折れる前に、ストレッチしちゃうみたいなことができるようになったのが、30代後半くらいかな。結婚して、主婦をやったりとかして、人に尽くさなきゃいけない日々がよかったのかもしれない。尽くしてもらうだけじゃなくて。自分が主役じゃない生活っていうのを。すべての経験が今の大黒摩季の強さになっているとは思いますね。でも非を認めたり、弱さを認めたり、自分を許したりすることってとっても大切ですね。日本人ってとっても高潔で、自分を追い込んだりとかしがちじゃない?でも追い込んだ先って、殆どいいことはない。自分の人生後悔したところで何も始まらなくて。波乱万丈すぎて、なぜ私だけがと追い詰めすぎて、その理由を掘り下げすぎて極限まで行くから、笑っちゃうようになったんだと思う(笑)もうそれも私だからしょうがないもん、みたいな。
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